「被災地から持続可能な未来都市」へ、石巻エリアの震災復興の軌跡と一次産業の挑戦

公開日:2022/02/21 
最終更新日:2022/09/28
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2020年5月、内閣府の地方公共団体によるSDGs達成に向けた取組についての公募において、宮城県石巻市は「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。

参照)「石巻市SDGs未来都市計画」

また、宮城県東松島市も2018年6月に「SDGs未来都市」に選定を受けています。

参照)「東松島市公式ホームページ」

 

本記事では、東日本大震災の最大の被災地であった石巻市や女川町で震災当時の状況や復興へ向けた街と人々の軌跡を伝える様々な伝承施設と、地域の人や経済、自然環境がこれから先も持続していくため、未来志向で活動を続ける方々の取り組みを紹介したいと思います。

 

遺構・伝承施設の展示や語りを通じて自然の脅威や復興にかける人々の思いを知り、その上で女川の街並みや牡鹿半島の小さな浜(集落)をゆっくりとめぐってみると、きっと観光だけでは得られない発見ができると思います。

震災から10年を経て、ようやく一般公開された施設も多くありますので、石巻や女川町、そして牡鹿半島を訪れる際にぜひ立ち寄ってみてください。

 

 

■震災の爪痕がほぼそのまま保存されている「震災伝承地」をめぐる

 

宮城県石巻市と女川町にあり、震災と津波によって被害を受けた地域や建物を公開、伝承する施設をいくつかご紹介します。

 

◯学校防災の教訓を学ぶ「石巻市震災遺構大川小学校」

「石巻市震災遺構大川小学校」は、東日本大震災の津波により犠牲となった児童・教職員84名、大川地区全体で418名の方々の慰霊・追悼の場として、また震災被害の事実や、防災・減災のための避難の重要性等を伝える遺構として、2021年7月に公開されました。

 

校舎やプール、屋外運動場、野外ステージ等がそのまま残されており、遺構の周囲には、メッセージや解説パネルが設置されています。

 

敷地内の「大川震災伝承館」には、震災前後の写真等のパネルや地域模型、当時のまま残された実物資料を展示する展示室の他、多目的スペースがあります。

大川小学校

津波の影響を受けて壊れた外壁や門が保存されています

大川小学校②

震災以前、ここに多くの人々が暮らす普通の生活があったことを思い起こさせるメッセージが綴られています

大川小学校③

震災被害を受ける前の小学校の様子や街並みを紹介するパネル

大川小学校④

震災前後の写真等のパネルや地域模型、実物資料を展示する展示室の他、多目的スペースもあります

大川小学校⑤

津波が去った後に小学校に残された時計や一輪車がそのまま保存されています

 

「石巻市震災遺構大川小学校」

入場料 :無料

開場時間:9:00〜17:00

休館日 :年中無休

 

「大川震災伝承館」

宮城県石巻市釜谷字韮島94番地TEL:0225-24-6315)

入場料 :無料

開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)

休館日 :水曜日 (水曜日が祝日の場合は開館し、翌日休館)

 HP :https://www.city.ishinomaki.lg.jp/okawa/index.html

 

◯津波の威力を今に伝える「女川交番」と、生まれ変わった女川の街並み

女川町は震災以来、安全な高台へ住宅地を整備し、女川駅を中心とする「にぎわい拠点」として公共施設や商業・観光施設などを集め、コンパクトな市街地形成を目指し復興していきました。

 

そんな新しく再建されたエリアの一画、シーパルピア女川から港側に向かう場所に今も残されているのは、震災で崩壊した「東日本大震災遺構 旧女川交番」です。


2階建てだった交番は、津波により基礎部分の杭が引き抜かれたことにより、横倒しになったと考えられ、鉄筋コンクリート造の建物が津波で倒壊・転倒した事例は、世界的に珍しいと言われています。


震災の記憶と教訓、復興の歩みを後世へ継ぐとともに、今後、同じ悲しみを味わうことの無いように願い、震災遺構として保存されています。

旧女川交番

被災状況や、復興に向けたまちづくりの過程などを記したパネルが壁に展示

旧女川交番②

裏側の位置から見ると、津波によって杭が引き抜かれた様子がよくわかります

 

JR東日本石巻線の終着駅である「女川駅」は津波によって流され、被災時はホームとエレベーターシャフトのみが残るのみでした。再建された現在の新駅舎は、震災前より200m内陸側へ移動され、地盤は約7メートルかさ上げされた場所に建てられています。ウミネコが羽ばたく様子をイメージした曲線を描く大屋根が特徴です。世界的建築家の坂茂さんが設計しており、駅舎と町営の温浴施設「女川温泉ゆぽっぽ」が合築されています。

女川温泉ゆぽっぽ

3階建ての最上階の展望デッキからは「シーパルピア女川」のプロムナードと女川湾が見渡せます。

 

駅校舎すぐの「シーパルピア女川」は、震災で大きな被害を受けた女川を盛り上げる、復興のシンボルとして建てられたテナント型の商業施設です。

女川駅前から港に向かって続く赤いレンガ道のプロムナードには、たくさんの店舗が軒を連ねています。

プロムナード

駅から港まで続くレンガのプロムナードは、初日の出がちょうど道の真ん中に見えるように設計されています

 

 

国内最大級の被災のあった石巻市南浜地区の今

 

石巻市は、約4,000人の犠牲者が集中した国内最大の被災市町村ですが、その中でも旧北上川河口部に位置する南浜地区は、津波の襲来と火災の延焼により、特に被害の大きかったエリアです。

 

◯震災の記憶や教訓を後世へ伝承する「みやぎ東日本大震災津波伝承館」

2021年6月、東日本大震災の津波で亡くなられた方々への追悼と、震災の記憶や教訓を後世へ伝承するため造られたのが「石巻南浜津波復興祈念公園」と「みやぎ東日本大震災津波伝承館」です。

伝承館①

伝承館の館内は、展示スペースや被災された方々のインタビュー動画、小シアターなど、震災について知ることができる様々なコンテンツがあります。

 

伝承館②

伝承館の館内は、展示スペースや被災された方々のインタビュー動画、小シアターなど、震災について知ることができる様々なコンテンツがあります。

 

伝承館③

「救助、共助、日常、生業」の4つのテーマからなるインタビュー動画コーナーでは、震災に遭われた多くの方の当時の生々しい状況や、復興、未来にかける思いを知ることができます。

 

「みやぎ東日本大震災津波伝承館」

宮城県石巻市南浜町2丁目1-56 TEL:0225-98-8081)

入場料 :無料

開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)

休館日 :月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日(土日、GW期間を除く)

     年末年始(12月29日~1月4日) ※毎月11日は曜日、祝日に関わらず開館

ホームページ:https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/densho/miyagi-denshokan.html

年末年始(12月29日~1月4日) ※毎月11日は曜日、祝日に関わらず開館

 

◯「震災遺構 旧門脇小学校」と「”命の山” 日和山公園」

石巻南浜津波復興祈念公園の北側には「旧門脇小学校」があり、震災遺構として現在も校舎が保存されています。

旧門脇小学校

「旧門脇小学校」は、2022年4月に公開予定

旧門脇小学校の裏手に位置し、標高60mほどの丘にある「日和山公園」の頂上には「鹿島御児神社」が鎮座し、鳥居越しには震災跡地と広大な太平洋が広がっています。

この場所は、東日本大震災時、数えきれない人が避難した”命の山”となった場所。高さ6mを超える大津波が、目の前の街並みや車を押し流し、同時に発生した津波火災によって燃え上がる街の景色を見ながら避難しました。

日和山鳥居

2021年12月に再建された鳥居

日和山公園

階段を降りた鳥居の下には、ベンチがあり、太平洋を見渡せます

「日和山公園」宮城県石巻市日和が丘二丁目地内( 石巻市観光課0225-95-1111)

 

 

■”被災地”から地域の持続へ、一次産業の挑戦から生まれたプロジェクト

 

〇花と緑の力が人の繋がりを生んだ「雄勝ローズファクトリーガーデン」

季節ごとの花が咲く本格英国式ガーデン「雄勝ローズファクトリーガーデン」。

津波で流された家族の霊を弔うため、被災した実家跡地に植物を植え始めた徳水利枝さんと、その思いに賛同した地域住民やボランティアたちが、「雄勝の街を花と緑の力でよみがえらせよう」と復興プロジェクトを立ち上げました。


被災者が亡くなった人とつながる慰霊の場として、また被災者と支援者が交流する癒しの場としてガーデンを運営するとともに、震災の教訓を伝える防災教育・語り部、写真掲示などの震災伝承活動も行っています。

雄勝ローズファクトリーガーデン①

徳水さんの生家があった土地にボランティアや地域の人とつくってきた「雄勝ローズファクトリーガーデン」

 

ローズファクトリーガーデンで栽培される「北限のオリーブ」は、宮城県石巻市の自治体SDGs推進の取り組みの1つ、「地域の宝研究開発事業 」としても取り上げられており、地域特性を生かした新たな特産品とすべく生産の可能性について試験栽培されています。付加価値を付けた加工品の商品化(オリー ブオイル、オリーブ塩漬け、オリーブ葉のパウダー等)に取り組み、農産業の活性化を図っています。

北限のオリーブ

バラやコスモスなどの花、ハーブと共に植えられている「北限のオリーブ」

「雄勝ローズファクトリーガーデン」

宮城県石巻市雄勝町雄勝字味噌作34-2

開園時間:9:30~16:30

休園日 :火曜日(5月の連休中は開園)及び年末年始

ホームページ:http://ogatsu-flowerstory.com/about

※徳水利枝さんのインタビューとバラ園の様子が見られる動画はこちら

引用元:​khb東日本放送

 

◯農を通して地域、社会、自然とつながるソーシャルファームを目指す

イシノマキ・ファームでは農業を通して新しい雇用を生む為に、地域初のホップ栽培とビール醸造にチャレンジしてきました。津波の被害にあった白浜地区で塩害にも負けず、立派にホップの花を咲かせ、2017年夏に石巻で初のクラフトビールとして「巻風エール」」が誕生しました。さらに石巻初のビール醸造所を旧日活パール劇場を改修して建設しており、2022年4月頃に完成予定です。

風巻エール

「巻風エール」は石巻うまいものマルシェやオンラインストアなどで購入できます

参照記事⇒https://kahoku.news/articles/20220103khn000012.html

 

◯漁師家族が希少な国産きくらげの栽培に挑戦、地元の活力アップに

宮城県石巻市小渕浜で、希少な国産のきくらげ「金華きくらげ」の栽培に取り組むのは「阿部水産」。小渕浜で長年わかめや牡蠣の養殖を手掛けてきた中、休漁期を利用して取り組むキクラゲ栽培を開始。地域住民やボランティアも年々増え、事業を通じて地域のつながりが強まり、地元の活力アップに貢献しています。

 

2020年は試食販売会が新型コロナ感染拡大の影響で中止に。設備の維持管理のためのクラウドファンディングで、100万円の目標を超える資金調達を成立させるなど人の繋がりで新たな牡鹿の特産品にチャレンジし続けています。地元の人の繋がりで水産業を盛り上げてきた様子が地元新聞メディアでも伝えられています。

金華きくらげの栽培の様子と阿部さんたちのインタビューが見られる動画はこちら

引用元:仙台放送

金華きくらげチラシ

金華きくらげを買って応援!食べて応援!

阿部水産

「金華きくらげで、人が賑わうきっかけに繋げたい」と話す阿部さん姉妹

金華きくらげは「ホエールタウンおしか」や「いしのまき元気いちば」などで購入できます

 

なお、3〜4月はわかめ収穫が最盛期を迎え、人手が不足するため、例年は地域の仲間や遠方からのボランティアの方が手伝いに訪れるそうですが、ここ数年はコロナ禍で厳しい状況とのこと。気になる、ぜひ手伝ってみたいという方は阿部水産さんへ問い合わせてみてください。

わかめ収穫体験の様子が見られる動画はこちら

 

◯デザイン選びも楽しい「トラッシュポーチ」を身に着けてSDGsに貢献しよう

最後に、当機構でも、地域の持続や環境保全に寄与するアイテムとして、「みちのく潮風トレイル」や「宮城オルレ奥松島」を歩くハイカーをメインに「トラッシュポーチ」を企画、販売しています。

 

このトラッシュポーチは、宮城県石巻市内に拠点を持つウェットスーツの人気ブランドの株式会社モビーディックのスウエットスーツの端切れを活用した手作りのため、全く同じデザインはありません。

 

観光やトレッキンなどの途中に小さなごみが落ちていたら拾ってポーチに入れてください。皆が歩いた後は、道や街がきれいになる、そんな歩いた証を残していただけたらと思います。

トラッシュポーチ

端切れを使っていることもあり、一つ一つ違う色や柄になっていておしゃれなトラッシュポーチ。気になる方は是非お問い合わせください!

お問い合わせ先:一般社団法人石巻観光推進機構

〒986-0822 石巻市中央二丁目11番21(かわべい内) TEL:0225-98-8285

 

取り扱いショップ:あおみな

〒981-0412 東松島市宮戸字川原5番地1 TEL:0225-88-3997

 

 

さまざまな被災伝承地、復興後のシンボルとなる施設、そして石巻の土地で未来に向けて活動し続ける人々をご紹介しました。石巻に訪れる際の参考にしていただければと思います。

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